叱る、とフィードバック

濵桜コンサルティングの松田史子です。

部下育成をする中で「叱る」ことに躊躇
され、悩んでおられる管理職の方は多く、
「叱ることは難しいです」
と、よくご相談をいただきます。

今回は、そんな「叱る」とフィードバック
についてのお話です。

人材育成を目的とする
成長フォーカス・フィードバックには
2種類あります。

ポジティブ・フィードバックと
コンストラクティブ(建設的な)・
フィードバックです。

ポジティブ・フィードバックは
肯定的なこと、良いパフォーマンスに
ついて伝えることを指します。
褒める、感謝する、もここに含まれます。

コンストラクティブ・フィードバック
は、パフォーマンス向上のために行う
フィードバックを指します。

ポジティブの対はネガティブ(否定的)
でしょう?と思われるかもしれませんが

成長フォーカス・フィードバックは
相手の成長のために行う行為なので、
否定的な評価を与えるのでなく、
良くなるための建設的なフィードバック
を行うのです。

この説明をすると、よく聞かれるのが
日本語に当てはめた場合です。

「褒める」はポジティブ・フィードバック
でわかるけど「叱る」場合はどうするの?

コンストラクティブ・フィードバック
は叱るのと違うの?ということです。

「叱る」については諸説ありますが
「コンストラクティブ・フィードバック」
と「叱る」についてそれぞれの目的や
アプローチという角度で定義してみると、
以下のような違いが見えてきます。

■叱る

目的:
主に行動の是正や間違いを指摘すること
が目的です。

アプローチ:
通常、叱る際には厳しい言葉遣いや態度
が伴い、目上から目下へ行うため一方的
なアプローチになりやすい。

受け手の反応:
真摯に受け止め改善するケースもありま
すが、場合によっては防御的になったり、
萎縮することもあり、指摘された問題の
解決や改善に対して消極的になる可能性
があります。

結果:
短期的には行動の是正が見られることも
ありますが、長期的には関係の悪化や
モチベーションの低下を招くことがあり
ます。

■コンストラクティブ・フィードバック

目的:
相手の成長やスキルの向上が目的です。
間違いや改善点を指摘しつつも、その人
のポテンシャルを引き出し、より良い成
果を促すために行われます。

アプローチ:
ポジティブなアプローチで、具体的かつ
客観的な事実に基づいて行われます。
相手の感情を尊重し、前向きな改善を
促します。

受け手の反応:
受け手は自己改善の機会として受け止め
やすく、建設的な行動変化につながる
ことが多い。

結果:
長期的には個人の成長やチームワークの
強化に寄与し、より良い結果を生む可能
性が高まります。

どちらも相手の成長のための行為では
ありますが、短期的な問題解決には
叱ることが有効かもしれませんが、
長期的な関係構築や個人の成長には
コンストラクティブ・フィードバックが
より効果的といえると思います。

では、叱るは良くないのか?というと、
そうではないと思います。

日本には「愛情を持って叱る」という言い
方もあるように、効果的に叱ることは、
時として必要な行為と言えるでしょう。

とはいえ、「叱る」「叱られる」に対して、
過去の経験を踏まえて、ポジティブな
イメージを持たない人の方が多いのも
また事実だと思います。

時代の変化もありますが、上手に叱る
ことはやはり難しいからだと思うのです。
だから、叱れなくて悩んでしまうのです。

ところ変わってアメリカの話をします。

私はGAP JAPANというアメリカ企業で
フィードバックを学びましたが、日本に
いながら社内で「叱る」という言葉を使う
ことは、全くありませんでした。

ですから、当時の記憶の中で、上司から
厳しいフィードバックを受けたことは
何度もありますが、「叱られた」と感じた
ことは一度もありませんでした。

アメリカでは、大人が大人を叱るという
ことは通常ないそうです。

その代わり良いことも、そうでない場合
も、互いに尊重しながらフィードバック
をし合う文化を教わりました。

私自身は、初めて聞いたフィードバック
というコミュニケーション手法を、日本
語訳せず、新たな言葉として覚えたこと、
「フィードバック文化」という環境ごと
受け止め、使っていったことで、周囲との
コミュニケーションや、対人関係が楽に
なり、成長できた実感があります。

日本には日本の教育や指導方法がありま
すが、フィードバックは外から入ってき
たものです。

だから、フィードバックを日本語や
日本のスタイルに当てはめて考えなくて
よいのではと思います。

重要なことは、「叱る」と
「コンストラクティブ・フィードバック」
の違いや効果を知ったうえで

あなたの部下の成長にとってのベストを
考えて、恐れず行動することです。

これが、冒頭のご相談への答えです。
ぜひ、行動してみてください。

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